No.054 酒典童子の場合(文責・台風15号氏)


昔々、東の果ての大きな山に小さな村があり、
サムライやニンジャ、そして多くの民が平和に暮らしていました。
ところがある日突然、村のはずれに
酒典童子という大きな悪鬼が現れました。
酒典童子はお酒が大好きな上に乱暴な性格でした。
毎日毎日お酒ばかり飲んでおり、酒がないと暴れまわるのです。

そしてある晩に、突然村中に助けを呼ぶ声が響きました。
驚いた村人達が飛び出すと、そこには
泣き叫びながら逃げ回る、女の鬼がいました。
追いかけているのは、酒典童子でした。
酒典童子は彼女を気に入ってしまい、
何とか手に入れようと追い掛け回していたのです。

こうして酒典童子は、村の人たちだけでなく
他の鬼達からも嫌われていきました。
そしてついに村人達は、酒典童子をこらしめようと
武器を取って立ち上がったのです。

けれど、酒典童子は札付きの暴れん坊。
村人達は力を合わせて頑張りますが、簡単には敵いません。
それでも諦めずに戦う村人達は、残された力を振り絞って
酒典童子に術をかけたのです。

するとどうでしょう。酒典童子の体は、
みるみるうちに壁へと吸い込まれてしまうではありませんか。
村人達は、酒典童子を倒してしまうのではなく、
洞窟の中に封じ込めてしまったのです。
こうして村は平和な日々を取り戻し、
人間達も鬼達も幸せに暮らしました。

しかし、災厄とは忘れた頃にやってくるもの。
長い長い時が流れて、村ではもう、酒典童子の存在そのものがただの昔話になりつつありました。
だから、誰もそうなることを予期していませんでした。
そう―――酒典童子の猛威は、再びこの世に蘇りつつあったのです。


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