
そしてある晩に、突然村中に助けを呼ぶ声が響きました。
驚いた村人達が飛び出すと、そこには
泣き叫びながら逃げ回る、女の鬼がいました。
追いかけているのは、酒典童子でした。
酒典童子は彼女を気に入ってしまい、
何とか手に入れようと追い掛け回していたのです。
こうして酒典童子は、村の人たちだけでなく
他の鬼達からも嫌われていきました。
そしてついに村人達は、酒典童子をこらしめようと
武器を取って立ち上がったのです。
けれど、酒典童子は札付きの暴れん坊。
村人達は力を合わせて頑張りますが、簡単には敵いません。
それでも諦めずに戦う村人達は、残された力を振り絞って
酒典童子に術をかけたのです。
するとどうでしょう。酒典童子の体は、
みるみるうちに壁へと吸い込まれてしまうではありませんか。
村人達は、酒典童子を倒してしまうのではなく、
洞窟の中に封じ込めてしまったのです。
こうして村は平和な日々を取り戻し、
人間達も鬼達も幸せに暮らしました。
しかし、災厄とは忘れた頃にやってくるもの。
長い長い時が流れて、村ではもう、酒典童子の存在そのものがただの昔話になりつつありました。
だから、誰もそうなることを予期していませんでした。
そう―――酒典童子の猛威は、再びこの世に蘇りつつあったのです。