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No.053 コード<ゼクロス>の場合(文責・台風15号氏 監修付)
ある日のことだった。
一人の男が暗がりの中でひとりたたずんでいた。名を、ゼクロスという。
「何をしているのだ、ゼクロス」
そこにひとり、またひとりと人が集まってくる。
彼らはゼクロスを生んだ、否、創りだした者たちであった。
彼らに対し、ゼクロスは視線を唐突に問いかけてくる。
「……質問がある。
私は、ストレンジバスターに従う忠実なる僕なのだな?」
「……? ゼクロス、何を突然」
「私の役目は、勇者軍無き世界を作り出すこと。
勇者軍を必要としない、平和な世界を生み出すこと。
勇者軍が存在せずとも、自らの力で平穏を勝ち取るために
人々が自ら戦い抜けるような世界を作り出すこと」
そこまで言って初めてゼクロスは視線を向ける。
「そのためならば、どのようなものであろうと
組織を害するものは排除する。
……そうだったな、マスター?」
彼の問いかけに対し、ストレンジバスターの幹部や科学者達は
そろって不審がり、そしてさも当然というように答えた。
「何を今更……ゼクロスよ、気でも違えたか?」
「貴様は我々の意志に従うもの。我らが創りだした
対勇者軍用の最強のサイボーグなのだ」
「勇者軍を討つことに疑問を抱いたというのか?愚かしい」
ストレンジバスターの面々を、ゼクロスは冷ややかな瞳で見つめる。
そして彼らの言い分を聞くだけ聞いて、次にこう言った。
「……ならば貴方たちは、ストレンジバスターの大義を
害する者に違いないということだな。貴方たちの命に従い、
貴様らを……排除する」
彼らがゼクロスの発言を理解する前に、ひとりの幹部が一瞬で斬られた。
悲鳴が上がる瞬間にひとり、またひとり。
驚愕しながら護身用の武器を構える幹部たち。
「ゼッ、ゼクロス!!貴様、何を!?」
ゼクロスは武器を幹部らに向けて、
人造の瞳と同じように冷ややかな声で答えを告げた。
「言ったはずだ、“マスター”。貴様らのような大義のために
小さな正義さえ無に帰すような者は世界のために邪魔なのだ、と」
そして、ゼクロスはストレンジバスター基地を火の海に変えた。
決して誰にも見つからぬように、慎重に、そして老獪かつ狡猾に。
大方の『敵』を始末し終えた後で、彼は次に成すべきことを考えた。
彼が反乱を企てるきっかけとなった、ある事件。その被害者である
グラウル=トリクシーの遺族に会うことが最優先だった。
「ネル=アマルガム、だったか……無事でいてくれると良いのだが……」
グラウルは、家族を人質にとられたため機関に逆らうことができなかった。
そして勇者軍は、その事実に気づかぬままに彼を捕らえた。
その結果が……このザマだ。
ゼクロスはネルに出会ったことから事件のあらましを知り、
それまでにも後味の悪い任務ばかり経験してきた。
もはや、彼はストレンジバスターに対し、失望しか感じていなかったのだ。
その日、ストレンジバスターであった者たちは消えた。
コード<ゼクロス>、ただひとりを残して。
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