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今夜の番組チェック

No.046 ベアトリスの場合(文責・台風15号氏)


ぽかぽかとした太陽が、いやに暑い。そのくせして、身体はなぜか冷えていく気がする。
傷を負ってからどれだけの時間が経ったのだろう、と彼女は思った。もう体力も限界に近づきつつある。
ひょっとしたら自分はこのまま死ぬのかもしれない、そう思っていた。
だが、そこに唐突に声が聞こえてきた。そこにいたのは幼い人間の少女。
「どうしたの?……あなた、ケガをしてるの!?」
―――助かった?そう思ったところで、意識はプツリと途絶えた。

しばらくして、ぼんやりと景色が開けてきた。……ここは一体、どこだろう。
「あ……!エレイン、気がついたみたい……!」
「本当!?よかった……」
そこにいたのは、意識を失う直前に見た少女。そして、別にもうひとりの少女。
……どうやら、彼女達が自分を助けてくれたようだ。
「大丈夫?あなた、アルマ高原の近くで倒れていたのよ。体力を消耗してるけど、
しばらく安静にしていれば大丈夫だってお医者様が言っていたわ」
「本当によかったぁ……エレインがペガサスさんを連れてきたときは、すごく不安だったけど……」
「……ひびんば」
声はだいぶかすれていたが、それでも二人を安心させるかのように彼女は……傷ついたペガサスは小さく鳴いた。
エレインと呼ばれた少女はともかく、もう片方の少女が涙で顔をくしゃくしゃにしていたからだ。

自分を助けたのは、エレイン=トリクシーという少女であった。
どうやら父親をつい最近亡くしたばかりだったようが、病弱な母親を看病しながら
明るく過ごそうと努めている、親思いの優しい子であった。
傷を癒しながらエレインたちと暮らしていったペガサスは、やがてエレインの
親友である少女―――フローレンス=エルデナントに惹かれていった。泣き虫でとても気が弱いが、芯は強い。
エレインと助け合い、献身的に自分を看病してくれた。何かあるたびに、自分のことを心配してくれた。
ただ、彼女にとって常にいたわりの心は他者へと向けられているようだった。
自分自身への望みというものが、ペガサスである自分から見てもあまりにも小さいように見えたのだ。

やがて、別れのときは来る。体力は回復し、ケガもすっかり治っていた。
家の前で、エレインとフローレンスは自分を見送ろうとしている。そして今、自分はこの家を去ろうとしている。
「ペガサスさん……元気でね」
「お母さんもすごく寂しがってたわ。いつかまた、どこかで会えるといいわね……」
「ひびんば……」
ペガサスは別れを惜しむかのように振り返り、そして翼を羽ばたかせて飛び立った。
少しずつ、少しずつ二人の姿が遠くなっていく。そのとき、フローレンスの瞳に何かきらめくようなものが見えた。
―――その瞬間、彼女の選択は決まった。
「え……?」
「ちょっと……あのペガサス、戻ってくるわよ!?」
フローレンスと共にありたい。果たして、その願いを彼女は受け入れてくれるだろうか。
だが、少なくとも自分は自分の願いを裏切ることなどできなかった。
「ペガサスさん!」
初めて出会ったときと同じように、顔をくしゃくしゃにしながらフローレンスが駆け寄ってくる。

それが、彼女がフローレンスのパートナーになった瞬間。
ただの一頭のペガサスであったベアトリスが、生涯の友と出会った瞬間だった。


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