
しばらくして、なんと壁に穴が開いた。
魔神王城の崩壊が始まったのだ。
それまで黙っていたノウンスライムに、希望の色が見えた。
「……ここは一つ、逃げてみるか」
そう言うと、のたのたと逃げ始める。
彼が逃げてからきっかり2分の後、魔神王城は跡形も無く吹き飛んだ。
だが、彼は知らない、彼の後に実はひっそりと続く者がいた。
実験生物のナンバー2、ゾンビαが
ノウンスライムが出た一分後に、意志を持つでもなく、出てきたのだった。
それからしばらく、ノウンスライムは自由を満喫した。
だが、それも終わりの日が来た。
周辺のスライムを親睦を深め、その知能の高さから
リーダーにまで押し上げられたノウンスライムを、絶対の負戦線において
漆黒の鎧参号機が自分の戦力に仕立て上げたのだ。
その戦いも終わり、今度こそ彼は
自由を満喫できる身分に成り上がるはずだった。
そのために弟分であるゾンビαを犠牲にしてしまってはいたが……
それでも、ノウンスライムは自由となった。
ノウンスライムは平行勇者戦線に関わる事無く、パム地底湖に居座っていた。
だが、ここに居座り続けていると、多くの者が迷惑をする。
それを悟ったノウンスライムは、ヴェール・シティの方に移動し、
新たに住居を作ることにし、そこにスライム族を住まわせるつもりだった。
その場所の下見に行く途中で、ある青年が話しかけてきた。
「……なんだ、こんな所にスライム? 変わってんな」
「変わっているのはお主も同じだ。普通スライムに話しかける奴はおらん」
「うお、喋った!」
「……だが、面白いかもしれん。よければ、我に付き合わぬか? 退屈はさせん」
ノウンスライムは事情を話し、作業を手伝ってもらう事にした。
その代わり、ウィルヘルムは誤解ではあったのだが、シーナ撃破のために、
そこを少しの間だけ間借りさせてもらうことにしたのだった。
奇妙な友情ではある。
どうやらノウンスライムが本当の平穏を掴み取るには、
今しばらくの時が必要であると思われる……