その翌日、フィリスはデリアの家に遊びに行く事にした。
と言うよりはデリアに誘われたのだが。
「こっちですよー。普通の家ですみませんけど」
のほほんと案内するデリア。確かに普通の家である。
が、その横に併設されている企業用クラスの大型倉庫2軒と、建設中らしき一軒が気になる。
「デリア……これ、君ン家の?」
「と言うより、ボクのです」
「君の!?」
予想を上回る答えに、フィリスは驚愕した。
「あ、何なら見ます? ボクのコレクション」
デリアは笑いながら言う。
倉庫の中は、異常なほどの書類の数で溢れかえっている。
書類だけではない、彼女が集めた勇者軍関連の情報雑誌、
記事のスクラップや、資料の保管。
果ては大きい事件の記事や資料など、
古今東西の事件やら何やらのデータベースと化していた。
よく見れば、5000年以上前の資料まで、
一体どこからかき集めてきたのかと言いたくなる量だ。
「ふえ〜……」
間抜けなまでに口を開けながら、フィリスが呻く。
だが、フィリスが一番気になるのはぺーぺーであるはずのデリアのどこに
これだけの資産があるのか、という事であった。
「実はですね、ボクの家は元々資産面で勇者軍をバックアップしてたんです」
「資産家って事?」
デリアが苦笑しながら頷く。デリアが更に説明を始める。
「けれど、お金で何でも解決しようとするのが気に入らなかったし、前から身体を張る仕事がしたかったんですよ」
「……でも、コレクションには妥協しないね」
今度はフィリスが苦笑する番である。
「趣味と実益を兼ねてますから。ですから情報収集とかはバンバン任せて下さい」
「いいや、君にも実戦に出てもらおう。そう決めた。諜報には経験も必要だからね」
「ええッ!?」
どういう事かと言うと……フィリスはデリアの事が気に入ったのだ。
一人前になるまで鍛え上げてやろう、とひっそり決意したのだった。
平行勇者戦線の資料整理もひと段落したころ、デリアの自宅に電話がかかってきた。
「もしもし、ラルですけど」
「デリア=ラルさんですね。こちら、I−BISグランプリ実行委員会と申しますが」
「I−BISグランプリ?」
I−BISグランプリ。伝説のレーサー、キャプテン・シュライク等を主要メンバーに開催される、
新時代のスーパーカーレース。『Infinity Bliliant In Sonic グランプリ』の略だ。
「ウチの実行委員長がデリアさんの噂を人づてに聞きまして……できれば、あなたに一つ仕事を任せたいのです」
「仕事を?」
「実況です。I−BIS TVの」
「やります! やらせてください!! 上司には事情を話しますから!! むしろこちらからお願いします!!」
「分かりました。ではそのように、伝えておきます。それでは」
電話が切られた。
すぐにデリアは嘆願書を書き始めた。
副業としてI−BISの実況係を認めてもらうための嘆願書だ。
「んふふ〜、面白くなってきたぞ〜!」
ウキウキしながらデリアは今日も頑張るのだった。
どうやら、彼女の本当の活躍の場は
戦場ではなく、あくまで情報関連であるらしかった。