彼は任務に就いていた。
独力で、幾多にわたる犯罪組織を壊滅させろというのが任務内容だった。
並の戦士ならともかく、勇者軍メインメンバークラスには造作も無い任務だったが、
数が数なので、さすがに多少なりとも時間がかかる。
とは言え、勢力の大きい方から潰しているので、遠からず完遂も可能のはずだった。
が、仮住まいで彼を待ち受けていたのは、勇者軍個人端末から流れてくる情報だった。
『エドウィン=ストレンジャーが致命傷を負う。同僚の手によりコールド・スリープ状態にある』
「何だとッ!?」
ウィルヘルムは危うく激昂しかかったが、こんな所で怒鳴っていてもしょうがない。
彼は迷わず支度を済ませ、仮住まいを後にした。
目的地はスペース・ポート。惑星アースに何としても急がなければ。
だが、彼は情報をきちんと読まずに出て行ってしまった。
『加害者は勇者軍メインメンバー、シーナ=カレンの疑いがある』
という項目を……
それを知らずに現状においての惑星アームにおける最大勢力であるカレン部隊に
接触すべく、彼はグランド・タワーへ向かった。
すると、そこにいたのはカレン三姉妹。
特に、姉の陰に隠れつつも、何とか懸命にサポートしようとしている娘が目に付いた。
シーナ=カレンである。
とりあえずの判断で、ウィルヘルムは九尾の狐王から彼女を助けておいた。
何故だか、そうした方がいいような気がしたからである。
この点に関して言うなら、ウィルヘルムのターゲットを追う際の直感というものは天才的ですらある。
そして、シーナとウィルヘルムの争いが終わり、ギルティ戦線終結後、双方が誤解した後、
ウィルヘルムは従兄弟であり、最大の親友でもあるエドウィンを呼び出した。
「どうした、ウィル?」
「……俺をブン殴ってくれ、手加減も要らん」
「はぁ?」
エドウィンが怪訝な顔をする。
「……俺は誤解とは言え、レディにとんでもない事をするところだったんだ。ケジメはつけるべきだろう」
「……本ッ当に、変な所で融通の効かねぇ野郎だ」
エドウィンは深くため息をつく。
「じゃあいいんだな? いくぞ」
「ああ、思い切りやってくれ」
がすッ!!
「がはッ……!?」
予想していた衝撃と違う!?
エドウィンは、ウィルヘルムのおでこめがけて頭突きをかましたのだった。
「っ痛ぅ〜〜〜〜……」
エドウィンもかなり痛かったらしく、うずくまっている。
「おい、エド! なんでお前が痛い思いする必要がある、俺だけ殴れば済む話だろうが!」
「それが出来るようなら、俺にリーダーの資格は無ぇ!!」
怒鳴るウィルヘルムと、更にデカい声で怒鳴り返すエドウィン。
「……何だと?」
意味を計りかねてか、質問するような目をエドウィンに向けるウィルヘルム。
「そういった要らん心配は、あのシーナには無用だ。むしろそういった重荷を抱えるのは、リーダーの俺の仕事だからな」
「だが、エド、俺は……」
「……そう思うなら、これ以上シーナを、それに自分を責めないでやってくれ」
「……そうか……そうだな……」
この一発は効いた。あるいは、今まで受けたどんな攻撃よりも効いたかもしれない。
「というわけで、俺ぁ行くぜ、手前ェの残した仕事の後始末して来る」
「ちょっと待て、エド!」
「いいから。他にも知り合いになるべき勇者軍メンバーがたくさんいるんだ……アースを任せる」
「……分かった。お前が言うんだ、せいぜい期待させてもらうとするさ」
そう言うと、二人はお互い逆の方向へ歩き出した。
「うっし、んじゃ行くとすっかね!」
どこか吹っ切れた様子で、意気揚々と彼はヴェール・シティへ向かうのだった。