
そしてほどなくして、絶対の負戦線は終結する。
それから少ししたある日の事だった。
「ブレン!!」
町中だというのに、やたらと機敏な動きで突如リーファは現れた。
「おや、リーファさん。遊びに来ていただけましたか」
「さん付け要らないアルね」
嬉しそうにリーファは寄ってくる。彼女もまた、ブレンダンには好感を抱いていた。
「しばらくブレンの所にお世話になりに来たアル」
「ほう、それはどうして?」
「フェイロンとルナの邪魔をしないためにアル」
この細かな気遣いの出来る女性に、ブレンはさらなる好感を抱く。
その後、すぐにリーファとブレンの交際は始まる事となる。
リーファにしてみれば、これほど優しい男はそうはいないので、当然と言えば当然である。
彼女曰く『父さんに似てるアル』とか。
だが、リーファの受難はある意味、ここから始まると言ってよかった。
ブレンダンは性格が良い、といった次元ではなく、完全なお人好し。(これは欠点でもあるが)
そして、勇者軍メンバーの中でもそれなりの階級であり、また容姿も美しく、
魔術のエキスパートという事もあって、若い女性に大人気であったからだ。
「あんたッ! あたし達のブレンダン様に慣れ慣れしいのよッ!!」
「ンな事ワタシの知ったこっちゃ無いアルねッ!!」
どがががががががががががががッ!!
今日もブレンを狙う女達の戦いが街の各所で繰り広げられている。
性格には女達全員VSリーファといった様相であったのだが。
ジャブジャブフックアッパーローキック。ミドルキックストレートパンチ。足払いのちエルボーニードロップ。
色気もへったくれも無い悲鳴を上げながら、リーファによって女達が薙ぎ倒されていく。
「あの〜、皆さん穏便に……って聞いてませんね」
これには、さすがのブレンダンも身体を張って止める気にはならなかった。
というより、既に何度か割って入ったため、巻き添えを食って重傷なのが止められない理由である。
このケガは、並行勇者戦線、ギルティ戦線の間、彼を参戦不能にするまでに至ったという。
「あの〜……もう少し穏便に何とかなりませんかね……」
原因が自分にある事はさすがに自覚しているので、申し訳なさそうにブレンがリーファに問う。
「と言うより、毎日これではあなたの身が保ちませんよ?」
「だいじょぶアルね! いいトレーニングアルよ!!」
にこやかにリーファは笑う。
もちろん、当事者のブレンダンは笑えるわけがなかったのだが。
なお、この事態は、リーファが争っているうちに
女達とリーファの間で妙な友情が芽生えるまで続く事になったとか。
ちなみに、その時の様子はこんな感じである。
「あなた、なかなかやるじゃない」
「そっちこそ寄せ集めにしてはやるアルね!」
女達の代表と思われる人物が数名寄ってきて、握手を求める。
「もういいわ。勝手に惚気てなさいな。男なんて他にもいるんだから」
「アナタ達には悪いアルけど、そうさせてもらうアルね」
お互い、不敵な笑みを交わしつつ、がっちり握手する。
……もっとも、その握手も不自然なほどの力が互いに込められていたが……
ちなみにこの闘争が始まって、半月後の事であったと言う。
それからは比較的平穏な日々が続いている。
ただし、ブレンダンの頭痛はしばらく糸を引きそうだったが……
こんなてんやわんやを繰り返し、傷付きながらも、
リーファは確実に、自分の幸せを掴み始めるのだった。