彼女達の父はウェイン=ラングウェイ。
母の名はクラリス=カレンという。
ある日、アイリスは他の姉妹よりもいち早く、
『彼』を紹介される時がやって来たのだった。
ウェインとクラリスが、アイリスを呼ぶ。
「なあに? おかあさん」
無邪気な笑みで、てとてと走り寄ってくる愛娘に対し、
ウェインは人の悪そうな笑みを浮かべ、こう答える。
「アイリスは、もう5歳だったな。だったら、そろそろ彼と知り合ってもいい時期だ」
「……かれ?」
未だ幼いアイリスには、その言葉の意味が呑み込めない。
そんな彼女に、クラリスは微笑みかけてやる。
「……ヴァジェス、いらっしゃい」
すると、光の柱と共に、ヴァジェス=バハムートが姿を現した。
力強くも美しく、そして気高い姿の彼と、アイリスは初対面となる。
「お呼びですか、マスター・クラリス」
「お久しぶりですね、ヴァジェス。今日はこの子に会わせたかったのです」
「この子は?」
ヴァジェスにしては、いささか察しが悪い。
「私の娘、三姉妹の次女、アイリス=カレンですよ」
「おお、いつの間にかお世継ぎをお産みになっておられたのか」
素直に驚くヴァジェスに対し、アイリスはきょとんとしている。
「ほれ、アイリス。今日から彼が、お前の友達だ」
「おともだち……」
そう聞くと、全く物怖じしない様子で、ヴァジェスに近付く。
「こんにちは。私、アイリス。あなたは?」
礼儀正しく、一礼してから名乗るアイリスに、ヴァジェスは目を細める。
「おお、こちらこそよろしく。私の名は、ヴァジェス=バハムートだ」
そして、二人はいきなり仲良くなる。
これこそが、カレン家の最大の特徴、誰とでも仲良くなる力なのだった。
そして、一年後……
シーナが5歳になるのを見計らって、アイリスは姉と妹を連れて、外に出た。
「アイリスぅ。一体何ですかぁ?」
「まあ、見ててよ、姉さん……いでよ、ヴァジェス!!」
かかッ!!
光の柱から、ヴァジェスが出てきた。
「ひゃぁッ!」
「ね、姉様ッ!」
慌ててシオンの後ろに、シーナが隠れる。
「用も無いのに呼び出さないでもらいたいのだが」
「用ならあるわよ。ヴァジェスはまだ、私の姉さんと妹、知らないんでしょ?」
「ふむ、なるほど。では自己紹介させてもらう。我が名は……」
こうして、ヴァジェスが三姉妹と馴染むのに、さほど時間は要らなかった。
そして今、彼女はヴァジェスU世……すなわち、ヴァジェスの記憶を引き継いだフェイトと一緒にいる。
「どうした、アイリス」
「ん……なんでもないの。ヴァジェスと初めて会った時のこと、思い出しただけだから」
「ああ、親父の記憶のはずなのに、しっかり思い出せる。不思議なもんだ」
「そうね」
そう言って、彼女はクスリと笑う。
様々な思いを含んだ笑みを。